4 重点課題の取り組み状況
昨年度の重点課題として掲げた項目への取り組み状況は、以下のとおりです。
⑴ 保証部門
① コロナ禍などにおける資金繰支援への取組み
コロナ資金の借換えを主目的とした「伴走支援型特別保証」や金融機関と連携した「提携保証」を積極的に活用
し、資金繰支援に努めました。また、中小企業者との面談や金融機関の訪問を通して、金融支援などの相談に積極的
に応じました。
・ 保証承諾額 161億円(計画比107.5%)
・ 保証債務残高 1,752億円(計画比100.1%)
今後もコロナ資金を含め過剰債務に陥っている中小企業者からの資金繰安定資金の申込や返済緩和の条件変更の申込
が見込まれるため、引き続き、中小企業者の実情に即した金融支援を行う必要があります。
② 経営者保証を不要とする保証への取組みの強化
経営者保証を不要とする保証の取扱いの周知普及のため、広報誌やホームページに概要を掲載しました。また、経
営者保証を不要とする保証の要件に該当する中小企業者からの保証申込時に、融資取扱金融機関に対して、経営者保
証を不要とする保証の制度概要を説明し利用を促しました。
経営者保証を不要とする保証の取扱いについては、国も「経営者保証改革プログラム」を策定するなど個人保証に
依存しない融資慣行の確立に向け取り組まれており、引き続き、経営者保証を不要とする保証の推進に取り組む必要
があります。
③ 保証業務の電子化へ向けた継続的な取組み
全国統一の保証業務電子化のシステム開発(保証申込電子受付システム)については、まず期初に当該システム導
入の前提となる各種書類の押印レス化を実施しました。期中においては連合会主催の説明会へ参加して情報収集に努
め、各部署から選出された職員で構成した電子化推進プロジェクトチームが中心となって事務フローの変更等の協議
を行いました。
上記保証申込電子受付システムとは別に「信用保証書の電子化」について、隣県信用保証協会が取扱いを開始して
いることから、当協会でも徴求書式(ホームページ内に掲載)の変更等について協議を行いました。
また、県内の金融機関2行から各種書類の授受に関して電子化(事務効率を図るためのペーパーレス化など)の要
請を受け、うち1行と令和5年4月から電子メールによる決算書データの授受を開始することとしました。
保証業務の電子化に向けての取組みが全国的に本格化することから、順調に導入・稼働ができるよう内部体制を整
える必要があります。
⑵ 期中管理・経営支援部門
① 期中支援(経営改善支援)及び再生支援の強化
・ 経営支援候補先企業として抽出した先や経営改善が必要と判断した返済緩和の条件変更申込先などについて、金
融機関と当該企業ごとの取組方針を協議し、24社に対して経営改善計画の策定支援に取り組みました。また、その
他の経営支援候補先企業74社に対して、令和4年度から設置している経営支援サポーター(中小企業診断士)が訪
問面談などによる伴走支援を実施し経営改善計画の策定などに繋げました。
・ コロナ禍の影響を強く受けている中小企業者については、中小企業活性化協議会(以下、「活性化協議会」とい
う。)と連携しながら、「収益力改善に向けた計画支援」や令和4年10月から開始した「405事業に対する補助事
業」(※)を活用し、43社に対して経営改善にかかる計画策定支援に取り組みました。
また、金融支援として、返済緩和によるリスケジュールで630件115億7,400万円(返済緩和残高構成比
52.0%)、新規保証で31件7億3,700万円を対応し資金繰の安定化を図りました。
・ 経営改善支援実施企業や経営改善の申込企業の決算情報を中小企業経営診断システム(McSS)に登録し、90
社に対して経営改善の必要性を理解してもらうために経営診断報告書を活用しました。
令和4年度からコロナ資金の本格的な返済が始まることを踏まえ、返済緩和の申出が増加することを想定し、その
対策として、専門家派遣事業の取扱件数の増枠や405事業の補助事業の創設に取り組んだ結果、経営改善計画の策定
支援ニーズにしっかり対応できました。
経営改善支援や再生支援が必要と判断する先については、今後も増加すると見込まれることから、国が示した「中
小企業活性化パッケージNEXT」を踏まえつつ、金融機関や活性化協議会などと連携を更に強化しきます。
※ 405事業:経営改善計画策定に対する国の補助事業で、事業開始時の予算額が405億円であったことから通称
「405事業」という
② 事業承継支援の強化
・ 事業承継支援の一環として、事業承継特別保証(以下、「承継特別」という。)を推進するために、次のことに
取り組みました。
ア 経営者保証コーディネーターと連携を強化するために今期12回の定例会議を開催し、今後の取組方針や承継特
別の利用見込み、進捗状況などの情報を共有しました。また、地場金融機関本部に延べ15回訪問して承継特別の
推進や金融機関の事業承継にかかる研修会(4機関)の講師を務めました。
イ 経営者の年齢が高齢な保証申込先や経営者交代の報告を受けた先の35社に対して承継特別を紹介するなど金融
機関と連携して取り組み、4社1億4,200万円の承継特別の保証承諾を行いました。
・ 過年度に専門家派遣事業による事業承継計画の策定支援をした4社に対して、その後の進捗状況を確認した結
果、事業承継完了先が2社、未了先が2社でした。
経営者保証コーディネーターとは、会議を通して連携した取組みを実施することができました。ただし、承継特別
候補先は、コロナ資金をほぼ利用しており、承継特別に借換すれば保証料や支払利息が発生して調達コスト高となり
見送る先が多かったため保証実績が低調でした。そのような中、社員などの親族外承継先には、経営者保証の免除を
優先するなどニーズが高いことから、今後はこのような承継先を注視していきます。
また、令和5年度には、保証料負担がない承継特別の佐賀県制度融資が創設されるので、上記取組みを継続しつ
つ、今後も事業承継・引継ぎ支援センターや金融機関と連携しながら円滑な事業承継に繋がるよう取り組んでいきま
す。
③ 経営支援効果測定のための蓄積データの検証
各種支援の蓄積データについて、次のように検証作業を行いました。
創業支援(創業資金保証先に対するモニタリング実施状況)
支援対象企業 89社 |
計画達成 16社 (18.0%) |
支援継続 33社 (37.1%) |
代位弁済実績 2社 470万円 |
計画未達 36社 (40.4%) |
支援終了 56社 (62.9%) |
||
判断不可 37社 (41.6%) |
支援機関に申込 0社 (0.0%) |
経営改善支援(専門家派遣事業及び405事業などによる経営改善計画の策定先のモニタリング状況)
支援対象企業 246社 |
計画達成 59社 (24.4%) |
支援継続 222社 (90.2%) |
代位弁済実績 4社 7,030万円 |
計画未達 129社 (53.7%) |
支援終了 20社 (8.1%) |
||
策定中等 58社 (21.9%) |
他の支援機関に移行 4社 (1.6%) |
再生支援(活性化協議会の関与により再生計画などの策定先のモニタリング状況)
支援対象企業 94社 |
計画達成 25社 (26.6%) |
支援継続 83社 (88.3%) |
代位弁済実績 2社 1億3,900万円 |
計画未達 56社 (59.6%) |
支援終了 5社 (5.3%) |
||
策定中等 13社 (13.8%) |
他の支援機関に移行 6社 (6.4%) |
事業承継支援(専門家派遣事業により事業承継計画の策定支援先のモニタリング状況)
支援対象企業 4社 |
計画通り進行 4社 |
事業承継完了 2社 |
計画より遅延 0社 |
事業承継未了 2社 |
・ 各支援ごとに策定された計画に対する実績状況を検証しました。
・ 創業支援、経営改善支援、再生支援とも事業実績が計画に達成していない先の割合が多く今後の課題となりまし
た。また、8社2億1,400万円が資金繰破綻となり代位弁済を履行しました。
今後は、事業実績以外の検証項目も検討しながら、経営支援効果測定の指標に繋げていきます。
4
⑶ 回収部門
総回収実績 4億 5,989万円(計画比82.1%、前年比75.6%)
<内訳>
定期回収 1億 9,135万円(計画比93.8%、前年比83.8%)…入金件数18,081件(前年比△1,158件)
不動産回収 5,994万円(計画比99.9%、前年比55.1%)…任意処分2,397万円、競売3,597万円
その他回収 2億 860万円(計画比70.5%、前年比76.8%)…一括回収1億3,000万円、破産配当他7,860万円
定期回収は、一括回収による完済や関係人らの高齢化による未入金先の増加により、件数が減少し計画を下回りま
した。不動産回収は、計画外での回収分が増加しほぼ計画を達成しました。その他回収は、求償権消滅保証や破産配
当による大口回収がなく計画を下回りました。この結果、全体の総回収実績では計画を下回りました。
① 回収効率化の促進
・ 一部弁済による保証債務免除 12件(前年比▲ 1件) 回収額 1,145万円(前年比 ▲454万円)
・ 求償権消滅保証の取組(保証承諾) 0件(前年比△ 2件) 回収額 0円(前年比△7,222万円)
・ 減額による一括完済 127件(前年比△98件) 回収額 1億3,000万円(前年比△3,110万円)
・ 不動産競売 14件(前年比△10件) 回収額 3,597万円(前年比 △225万円)
保証債務免除による回収は、件数、回収額ともに増加しました。求償権消滅保証による回収は、提案先は4件あり
ましたが保証承諾まで至りませんでした。減免による一括回収と不動産競売は、件数、金額ともに減少という結果に
なりました。
回収方法に新たな方法はなく、今後も地道な求償権先への状況把握を継続し、回収方法の提案に取り組む必要があ
ります。
② 求償権管理の効率化
・ 管理事務停止手続 262件(前年比△60件) 18億9,235万円(前年比 103.1%)
・ 求償権整理手続 401件(前年比▲23件) 31億6,600万円(前年比 106.8%)
管理事務停止、求償権整理等を促進した結果、年度末の求償権残高は、件数5,187件、金額359億5,396万円(う
ち回収可能求償権残高件数2,879件、金額189億9,463万円)と前年比362件、金額26億2,486万円減少しました。
今後も積極的に案件の回収見極めを行い、求償権管理の効率化に取り組む必要があります。
⑸ その他間接部門
① 内部管理体制の充実
コンプライアンス・プログラムに掲げた項目を着実に実施し、コンプライアンス態勢の維持・向上に努めました。
また、反社会的勢力等の排除に向けた取組みを継続し、反社として延べ13名、特記・特筆情報者として延べ法人14
社・個人17名を登録しました。
また、長引くコロナ禍に加え、ウクライナ危機や円安に伴う物価高など中小企業にとって厳しい環境は続いている
ため、県や連合会等からの情報を収集し、迅速な対応に努めました。
今後もコンプライアンス・プログラムの着実な実施と内部検査等を実施し、更なるコンプライアンス態勢の維持・
向上を図っていきます。また、反社会的勢力等を排除するため引き続き情報収集に努めるとともに、県警や関係機関
と連携を図りながら不正利用等の防止を図ります。
さらに、様々な危機に迅速に対応するため情報収集の強化・継続に努めます。
② 人材の育成と職場環境の充実
職員の専門的知識の習得及びスキルアップを図るため、連合会主催の研修・セミナー等の受講や金融機関研修会等
への講師派遣を行いました。対面方式での開催も復活してきており、WEB開催も含め順調に受講できました。
年間健康推進計画を着実に実施することに加え、今年度から特定保健指導対象者に対し、体質改善や健康増進の一
助として医療機関の受診を促し、職員の健康維持に努めました。
・ 衛生委員会 … 令和4年度4回開催
・ 健康管理 … 定期健康診断、脳ドック、ストレスチェック、情報作業機器健診等を実施
職員の専門的知識の習得及びスキルアップを図るため、引き続きOJTの実施や研修、セミナー等を活用します。
また、健康な職場づくりに向けて、今後も年間健康推進計画の着実な実施と内容の充実に努めます。
③ 広報活動の充実
協会ホームページや保証月報に加え、LINE(SNS)を利用した情報提供(協会の取組や関係機関のイベント
告知等)をタイムリーに発信しました。また、広報とLINE登録の推進を兼ねて、協会キャラクター(かちうみ
ん)を使用したノベルティグッズを作成し、県内金融機関や関係団体等へ配布する広報活動を展開しました。
・ リーフレット、チラシ、ノベルテイグッズ(うちわ)の作成、ホームページ、プレスリリースを行いました。
・ 県内金融機関店舗のデジタルサイネージを活用しての保証制度の案内の実施
・ LINE(SNS)の登録者数284先、情報発信回数24回
引き続き、国や関係機関から提供された情報等の発信に努めます。また、当協会のイメージキャラクターをLIN
Eや広報物等を積極的に活用し、親近感を高めて認知度向上に努めます。
④ 業務の効率化と電子化の推進
保証業務の電子化に関するシステム開発が進むなか、「保証申込電子受付システム」の稼働に向けて連合会等の全
国説明会に積極的に参加し、情報収集に努めました。また、県内に本店を有する9金融機関と個別に説明会を開催
し、意見交換を行った結果、令和5年度中の利用開始を希望するとして、佐賀銀行、佐賀共栄銀行から応募がありま
した。
また、選任した職員による電子化推進チームを立ち上げ、月一回定例的に会議を開催し、今後の保証業務の電子化
の取組み方針などを検討しました。
・ 連合会、保証協会システムセンター開催の説明会出席 … 16回
・ 県内金融機関との意見交換 … 延べ21回
保証部と経営支援部との連携や情報共有を図りながら「保証申込電子受付システム」の本格導入に備えます。ま
た、当協会のシステム更改が円滑にすすむように保証協会システムセンターや設備納入業者との連携を強化します。