5 外部評価委員会の意見

⑴ 業務環境について

 福岡財務支局佐賀財務事務所の佐賀県内経済情勢報告によると、県内経済は「新型コロナウイルス感染症の影響により、持ち直しに向けたテンポが緩やかになっている。」とされている。また、新型コロナウイルス感染症の感染状況は拡大と収縮を繰り返しながら長期化し、佐賀県においては令和4年1月27日から3月5日まで「まん延防止等重点措置」を実施すべき区域に指定されるなど経済活動は制限され、飲食業やサービス業などを中心に幅広い業種でコロナウイルス感染症の影響が継続していた。

 このような環境の中、協会においては、事業承継や再チャレンジの促進に繋がる経営者保証を不要とする保証や経営改善・再生支援が必要な企業を選定し専門家派遣事業に繋げるなど中小企業の事業承継や経営改善などの支援に取り組まれた。

 また、コロナ資金終了後の反動により保証承諾は大きく低迷したものの、コロナ禍の長期化や原油価格高騰の影響等から経営状況が悪化している中小企業からの条件変更に柔軟に対応されるなど企業の資金繰り安定に努められ、代位弁済は平成以降最低であった前年を上回ったものの低水準となり、中小企業者等の経営の安定に一定の役割は果たされている。

 

⑵ 重点課題の評価について

① 保証部門


ア コロナ資金終了後の資金繰り支援への取組み

 コロナ資金の後継資金として、「伴走支援型特別保証」や「事業再生計画実施関連保証(感染症対応型)」の推進に努められたが、年間を通して資金需要は低調に推移した。これは、令和2年度に実施されたコロナ資金(令和2年度全承諾額1,843億円、うちコロナ資金の承諾額1,740億円)の反動が大きかったものである。

 また、新たな資金需要が低迷する中、コロナ資金終了後の企業の現状を把握するため令和3年8月に約1,200企業にアンケートを実施し、企業の実態把握に努められたことは評価できる。このアンケート結果を分析し、今後の業務運営に大いに活用して頂きたい。

 コロナ禍の長期化や原油価格高騰の影響等から経営状況が悪化している企業も多く、資金の再調達や返済額緩和の変更申込に迅速かつ柔軟に取り組んで頂きたい。


イ 経営者保証を不要とする保証の適切な対応

 経営者保証を不要とする保証については、資金需要が低迷した影響もあり件数、金額ともにその取扱いが大幅に減少している。

 経営者保証を不要とする保証の取組みは、事業承継や再チャレンジの促進にも繋がるものであり、金融機関と連携しながら今後も積極的に取り組んで頂きたい。


ウ 保証業務の電子化へ向けた効率的な事務手続への取組み

 保証申込書等の書式変更(令和3年4月)、保証委託契約書の徴求時期変更(令和3年7月)について金融機関、商工団体へ周知を図り、混乱なく順調に移行できたことは評価できる。

 全国統一の保証業務の電子化については、全保連を中心にシステム開発が進んでいる。

 システム導入に向けて全保連からの情報収集に努めるとともに、参加対象となる金融機関との意見交換を行い、電子化推進のための準備を具体化させ進めて頂きたい。

 

② 期中管理・経営支援部門


ア 期中支援(経営改善支援)・再生支援の強化

 経営改善支援先として15社を選定し、当協会の専門家派遣事業による経営改善計画策定支援に取り組まれた。また、コロナ禍の影響を受け資金繰り支援が必要な先に対し、中小企業再生支援協議会の新型コロナウイルス特例リスケジュールなどで26社、伴走支援型特別保証などによる新規保証で20社に対応されている。

 協会内において他部署との連携が強化され、経営支援課に対し、保証課からの経営改善策定支援の相談、管理課からの求償権消滅保証の打診等が積極的に行われている。

 今後、コロナ資金の返済が本格的に始まることに伴う条件変更などの増加が見込まれ、金融機関や関係専門機関、協会内の他部署との連携をさらに強化して取り組んで頂きたい。


イ 事業承継支援の強化

 承継特別を推進策として、経保Coと連携強化するための方策や経保Coと協働して承継特別についての金融機関への説明、承継特別候補先リストを作成し、承継特別利用可能先を金融機関へ提案するなどの取組みは評価できるが、残念ながら令和3年度の承継特別の保証承諾の実績は3件、5,148万円と低調であった。

 事業承継は全国で喫緊の課題となっており、今後も経保Coとの連携を強化し、金融機関へは事業承継特別保証制度の周知を図りつつ、保証申込先や条件変更申込先の中から承継特別対象先を協会から提案するなど積極的に取り組んで頂きたい。


ウ 経営支援の効果測定のためのデータ蓄積

 支援項目ごとの取組実績のデータ蓄積は行われている。今後はデータ蓄積を継続しつつ、創業支援、経営改善支援及び再生支援については、計画の策定支援及び当該計画に対する実行(実績)状況の検証、事業承継支援については、事業承継に至るまでの過程を検証して頂きたい。

 

③ 回収部門


ア 回収効率化の促進

 求償権先の実情把握に努め、案件ごとに細やかな対応を図られたこと、また前年度から継続案件であった求償権消滅保証による回収や大口の破産配当もあり回収計画は達成されている。引き続き、関係人等との交渉を継続し、効率的な回収業務に取り組んで頂きたい。


イ 求償権管理の効率化

 求償権整理等を促進し、求償権残高を圧縮され求償権回収の効率化を図られたことは評価できる。引き続き、案件の回収可否を見極め、求償権の実情に応じた管理を徹底し、更なる効率化に取り組んで頂きたい。

 

④ その他間接部門


ア 内部管理体制の充実

 令和3年8月大雨災害や原油価格高騰等に対し、県や全保連等から情報を収集し相談窓口の設置や特別保証制度の創設などの迅速な対応が行われている。

 また、コンプライアンス・プログラムに掲げた項目を着実に実施し、コンプライアンス意識の浸透に努められ、反社会的勢力等の排除に向けた情報収集やスクリーニング作業に継続的に取り組まれている。

コンプライアンスの意識向上や反社会的勢力等を排除する活動を維持するため、今後も継続的に取り組んで頂きたい。

 

 

イ 人材の育成と職場環境の充実

 職員の専門的知識の習得及びスキルアップを図るため、コロナ禍のなか各種研修やセミナーにWEB等で参加されている。また、衛生委員会で策定した計画の着実な実施により、役職員の健康増進にも努められている。今後もこれらを継続的に実施し、職員の更なる専門的知識の習得及びスキルアップや健康な職場づくりを図って頂きたい。


ウ 広報活動の充実

 これまで取り組んできた活動に加え、新たな手法としてLINE(SNS)を開設したり協会キャラクター(かちうみん)を制作し、協会の取組みや関係機関のイベントなどの情報を積極的に発信するなど広報活動を拡大されたことは評価できる。今後は更に効果的、効率的な情報発信の取組みを期待したい。

 

⑶ 事業計画・収支計画・財務計画について

 事業計画について、令和2年度に対応したコロナ資金により過去に例を見ない規模で資金供給がなされた反動で資金需要が一段落したこともあり、保証承諾が低迷し、計画を下回ったものの、令和3年4月まで続いたコロナ資金の保証承諾やコロナ資金の返済据置期間設定により、保証債務残高の減少は小幅となり計画を上回った。

 一方、代位弁済は、平成以降で最も少なかった前年度を上回ったものの、コロナ資金利用企業の多くが返済据置期間中であったこと、かつ、返済履行企業の条件変更にも柔軟に対応したことにより計画を大幅に下回った。回収は、回収環境が年々厳しくなっていくものの不動産処分や求償権消滅保証などの大口回収があったため、前年度及び計画を上回った。

収支計画について、経常収支は、保証料及び事務補助金の増収を要因に8億3,403万円の黒字、経常外収支も責任準備金の洗い替えの差益などにより466万円の黒字となり、制度改革促進基金4,671万円を取崩して当期収支差額は8億8,541万円の黒字となった。

 財務計画について、収支差額の8億8,541万円は、収支差額変動準備金に4億4,270万円、基金準備金に4億4,271万円をそれぞれ繰り入れし、期末の基金準備金は78億3,745万円となった。

 協会が中小企業者等の保証需要に安定して応え、公共的使命を果たしていくためには、基本財産の充実が不可欠である。令和2年度に対応したコロナ資金により保証債務残高が急増したものの、コロナ禍の長期化などで業況が回復出来ていない中小企業の代位弁済増加も予想され、経営支援や期中管理の強化を図り損失の発生を抑えながら、継続して収益が確保できるような取組みを引き続き行って頂きたい。

 

⑷ 総括

 令和2年度の経常収支差額の大幅な赤字要因であった責任準備金の洗い替えの差益で、当期収支差額は8億8,541万円の黒字となり、収支差額変動準備金と基金準備金の積み増しによる基本財産の充実ができたことは非常に評価できるものである。

 ただ、保証債務残高の減少は小幅となり残高としては計画を上回ったものの、保証承諾は令和2年度に対応したコロナ資金の反動により大きく計画を下回り、コロナ禍以前の水準にも達していない。

 コロナ禍における厳しい状況下で、国、県及び金融機関と連携し県内中小企業を支え、県内産業の下支えをしてこられたことは大いに評価するところである。ただ、コロナ禍の長期化や原油・原材料価格高騰などにより中小企業を取り巻く経営環境は厳しい状況が続き、業種によっては業況回復が遅れており、経営改善・再生支援や期中管理の強化など協会の果たす役割は益々重要となってくる。今後も国及び県の施策に即応し、県内中小企業者等の資金繰り支援、経営支援を最優先に取り組んで頂き、県内産業の復活に向けての協会の役割に多いに期待するものである。   

 以 上

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