令和4年度経営計画
1 業務環境
⑴ 佐賀県の景気動向
我が国経済は、内閣府の月例経済報告によると「景気は、持ち直しの動きが続いているものの、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が残る中で、一部に弱さがみられる。先行きについては、感染対策に万全を期し、経済社会活動を継続していく中で、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち直していくことが期待される。ただし、感染拡大による影響や供給面での制約、原材料価格の動向による下振れリスクに十分注意する必要がある。また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。」とされています。
一方、県内経済の動向は、佐賀財務事務所の佐賀県内経済情勢報告によると「県内経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が引き続きみられるものの、持ち直しつつある。先行きについては、感染対策に万全を期し、経済社会活動を継続していく中で、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち直していくことが期待される。ただし、感染症による影響や供給面での制約、原材料価格の動向による下振れリスクに十分注意する必要がある。」とされています。
⑵ 中小企業を取り巻く環境
県内中小企業の景況判断は、佐賀財務事務所の法人企業景気予測調査によると、「令和4年1~3期は、全産業で「下降」超に転じている。業種別にみると、製造業は、食料品や生産用機械器具等で「下降」超となっていることから、全体として「下降」超に転じている。非製造業は、宿泊や飲食サービス等で「下降」超となっていることから、全体として「下降」超となっている。
規模別にみると、大企業は引き続き「上昇」超となっており、中堅企業、中小企業は引き続き「下降」超となっている。
先行きを全産業で見ると、令和4年4~6月期は「上昇」超に転じる見通しとなっている。」とされています。
⑶ 信用保証協会を取り巻く環境
令和3年度は、令和2年から始まった新型コロナウイルス感染症拡大による経済活動の制限・縮小に伴う影響に対処するために創設された「佐賀県新型コロナウイルス感染症資金繰り対策資金(令和2年6月12日受付終了)」及び「佐賀県新型コロナウイルス感染症対応資金(令和3年3月31日受付終了)」(以下「コロナ資金」という。)の反動により、年度当初から保証申込みが激減し、保証承諾は年度を通して低調な状況が続きました。これは、令和2年度にコロナ資金によって事業者に対する資金供給が過去に例を見ない規模で実施されたことで、資金需要が一段落したことによるものと思われます。
また、現在県内の企業倒産は低水準で推移していますが、これも、コロナ資金によって企業の資金繰りが下支えされた効果の表れと考えられます。
しかしながら、長引くコロナ禍で売上等が回復しないことに加え、過剰に債務を抱える企業もみられることから、コロナ資金の返済据置期間が終了し、元金返済が本格化する今年度においては、企業倒産等が増加していくことが懸念されます。
このように、令和4年度経営計画期間中においては、
・ 代位弁済の増加
・ 約定返済の変更による返済緩和企業の増加
・ 景気動向の不透明感
などを要因として、協会を取り巻く業務環境は大きく変動することが想定されます。
2 業務運営方針
⑴ 保証部門
・ コロナ禍の長期化など中小企業を取り巻く環境が厳しいなか、コロナ資金の元金返済が本格化する中小企業の資
金繰り支援を積極的に行うとともに、経営改善や事業承継などの支援が必要な中小企業に対し、経営支援部門など
と連携して専門家やアドバイザーを派遣する取組みを強化します。
・ 経営者保証が中小企業の事業承継や経営者の再チャレンジが進まない一因となっており、将来の事業承継や再チ
ャレンジの促進を図るため、金融機関と連携を図りながら経営者保証を不要とする保証を推進します。
・ 全国信用保証協会連合会(以下、「連合会」という。)を中心に進められている保証業務の電子化については、
引き続き情報の収集に努めるとともに、県内の金融機関との意見交換を行いながら円滑な開始に向けての準備を具
体化します。
⑵ 期中管理・経営支援部門
・ 中小企業にとって厳しい経営環境が当面続くことから、返済緩和による条件変更や代位弁済の増加が見込まれる
ため、期中支援(経営改善支援)及び再生支援の取組みをさらに強化します。
・ 事業承継ネットワーク事務局及び金融機関と連携しながら事業承継の実現に取り組むとともに、事業承継計画支
援実施先にはその進捗状況を確認していきます。
・ 経営支援の効果測定のために蓄積しているデータの検証作業に取り組み、効果測定指標の選定に繋げます。
・ これらを実施していくために経営支援部門の組織強化を図ります。
⑶ 回収部門
・ コロナ禍による代弁の増加など厳しい回収環境が続くなか、求償権回収の効率化を図るため、初動を徹底すると
ともに関係者の実情を把握し、損害金減免及び一部弁済による保証債務免除や事業再生支援を推進していきます。
・ 管理事務停止や求償権整理を促進し、効率的な管理に努めます。
⑷ その他間接部門
・ 公的な総合支援機関としての責務を果たしていくため、引き続き内部管理体制の強化に取り組みます。
・ 内外における急激な業務環境の変化に注視し情報収集に努めながら、人材の育成と職場環境の充実を図ります。
・ 保証協会の信頼度や存在感を高めるために情報発信に努めます。
・ 保証業務の電子化を推進するための準備を具体化します。
3 主な重点課題
⑴ コロナ禍などにおける資金繰り支援への取組み
コロナ禍の長期化などによる業績の悪化で資金の再調達や返済緩和の条件変更申込の増加が見込まれるため、中小企業の業績回復状況などを確認しながら、柔軟かつ迅速に対応し拡充された「伴走支援型特別保証」などを活用して、中小企業の資金繰りを積極的に支援します。
また、経営改善や事業承継などの支援が必要な中小企業に対し、経営支援部門と連携して専門家を紹介する取組みの強化を図ります。
さらに、コロナ禍で休止している定例相談会をリモート活用など非対面で開催し、経営支援や金融支援などについての相談に応じていきます。
⑵ 経営者保証を不要とする保証への取組みの強化
経営者保証を不要とする保証への取組みについては、「財務要件型無保証人保証」及び「金融機関連携型」、「担保充足型」の保証を推進しつつ、金融機関及び関係団体への更なる制度の周知のために広報活動も継続します。
また、事業承継における経営者保証を不要とする取組みについては、事業承継が経営課題になる可能性がある経営者年齢が60歳以上の保証申込企業に対して後継者の有無や事業承継への取組状況などを確認し、経営支援部門などと連携しながら経営者保証を不要とする保証の推進に取り組みます。
⑶ 保証業務の電子化へ向けた継続的な取組み
システム導入に向けて引き続き連合会からの情報収集に努めるとともに、参加対象となる県内の金融機関との意見交換を行い、電子化推進のための準備を具体化していきます。
また、電子化に伴い事務フローの変更が見込まれるため、内部体制や規程の見直しに着手します。
さらに、システム開発に先駆けて押印レス化などの書式改正が順次進められており、金融機関への説明会開催などで周知を図りながら円滑な移行に努めます。
⑷ 期中支援(経営改善支援)及び再生支援の強化
・ 協会が選定する経営改善候補先や保証申込みや返済緩和の条件変更申込み先で経営改善が必要と判断した先に対
し、専門家派遣事業の活用に加え、後述の経営支援サポーター(仮称)の派遣により、経営改善支援を行います。
・ コロナ禍などの影響を受けている中小企業については、金融機関や中小企業活性化協議会(旧中小企業再生支援
協議会)と連携しながら、「収益力改善に向けた計画支援制度」を活用した経営改善計画策定の促進とその実行の
支援に取り組みます。
また、金融支援が必要な場合は、リスケジュールの対応や伴走支援型特別保証などで新たな資金を支援するなど
資金繰りの安定化を図ります。
・ 中小企業経営診断システム(McSS)の経営診断報告書を活用し、経営改善が必要な中小企業がその必要性を
理解して取り組む意欲を引き出していきます。
⑸ 事業承継支援の強化
・ 円滑な事業承継を後押しする「承継特別」の利用促進を図るために次のように取り組みます。
ア 経営者保証コーディネーターとの定期会議において、今後の取組方針などを確認します。
イ 金融機関ごとの承継特別見込先及び経営者年齢が高齢(60歳以上)の保証申込先に対して、事業承継の取組状
況を確認し、「承継特別」を紹介するなど金融機関と連携しながら取り組みます。
・ 専門家派遣事業により事業承継までの計画策定を支援した先に対して、その後の進捗状況を確認すべくモニタリ
ングに取り組みます。
⑹ 経営支援効果測定のための蓄積データの検証
・ 令和3年度から開始した経営支援効果測定のための各種支援の蓄積データについて、データの積み上げを継続す
るとともに、その検証作業に取り組み、令和5年度に選定する経営支援効果測定指標に繋げます。
「創業支援」 … 創業計画に対する創業後の実績などについて
「経営改善支援」… 経営改善計画に対する事業実績について
「再生支援」 … 再生計画に対する事業実績について
「事業承継支援」… 事業承継計画に対する進捗状況について
⑺ 経営支援部門の組織体制の強化
・ 経営・再生支援業務を強化するため、業務統括部から経営支援部門と回収部門を分離して経営支援部に組織改正
するとともに内部体制の強化を図ります。
・ 経営支援にかかる知見や豊富な経験を有する外部の専門家を「経営支援サポーター(仮称)」に任命して派遣す
る制度を創設し、今後増加が見込まれる経営改善支援先に伴走しながら課題の解決やニーズの把握を行うととも
に、必要に応じて経営改善計画策定に繋げていきます。
・ 求償権先への再生支援を図るため、回収部門と連携しながら中小企業活性化協議会を活用した求償権消滅保証に
積極的に取り組みます。
⑻ 回収効率化の促進
・ 求償権先を見直し、定期弁済中で完済見込みのない年金受給者や退職前の給与所得者等の選定を行い、一部弁済
による保証債務免除を促進する。
・ 経営支援部門と定期的な会議を実施し、再生可能な中小企業者の選定を行い、中小企業活性化協議会との連携に
より求償権消滅保証を促進する。
・ 任意処分が困難な求償権については、有担保進捗状況の現状を把握し、継続して競売への移行を促進する。
⑼ 求償権管理の効率化
回収見込みの早期見極めを行い、回収が困難な状態と判断した場合には、速やかに管理事務停止を実施し、求償権
の整理を促進する。
⑽ 内部管理体制の充実
・ コンプライアンス・プログラムの着実な実施によりコンプライアンス態勢の維持・向上を進めます。また、反社
会的勢力等の排除に向けた取組みを継続し、不正利用等の防止を徹底します。
・ 近年の様々な危機に対応するための情報収集と迅速な対応を図ります。
⑾ 人材の育成と職場環境の充実
・ 外部研修への参加や関係機関との勉強会による専門的知識の習得と、セミナー等への講師派遣やOJTの実施を
通して職員のスキルアップを図ります。
・ 年間健康推進計画を着実に実施し、職員の健康管理と職場環境の充実を進めます。
⑿ 広報活動の充実
・ 令和3年7月に開設したLINE(SNS)等により、協会の保証推進活動や関係機関の取組みをタイムリーに
発信し、信頼度及び存在感を高める情報発信に努めます。また、同年7月に誕生したオリジナルキャラクター(ネ
ーミング:かちうみん)を活用し、広報活動を通して保証利用企業者の維持を図ります。
⒀ 業務の効率化と電子化の推進
・ 保証業務の電子化に関するシステムについては連合会を中心に開発が進められており、引き続き連合会からの情
報収集に努めるとともに、参加対象となる県内の金融機関との意見交換を行い、協会のハード面、ソフト面で整備
を進め電子化推進のための準備を具体化していきます。
・ 電子化推進と協会業務の生産性を高めるため、システム部門を中心に部署横断的にプロジェクトチームを立ち上
げ、計画的に電子化の取組みを進めるための方向性の検討と将来の電子化計画を策定します。
4 保証承諾等の見通し
令和4年度の保証承諾等の主要業務数値(見通し)は、以下のとおりです。
項 目 |
金 額 |
前年度計画比 |
保証承諾 |
150億円 |
50.0% |
保証債務残高 |
1,750億円 |
91.1% |
代位弁済 |
14億円 |
116.7% |
回 収 |
5.6億円 |
101.8% |