4 重点課題の取り組み状況
昨年度の重点課題として掲げた項目への取り組み状況は、以下の通りです。
⑴ 保証部門
① 中小企業者の多様なニーズやライフステージに応じた各種政策保証の推進
コロナ資金を令和2年3月から実施し、保証承諾1,843億2,525万円(前年比723.9%)、保証債務残高 2,034億7,555万円(同273.5%)と保証承諾、保証債務残高ともに激増し、コロナ禍にある中小企業者の資金繰り支援に努めました。
また、経営者保証を不要とする保証は、保証申込時等にその要否を検討するなど積極的に対応しました。その結果、保証承諾757件(前年15件)、279億9,190万円(同6億4,100万円)と大幅に増加し、遅れている中小企業者の事業承継や再チャレンジの促進に努めました。
以上、コロナ禍にある中小企業者の資金繰り支援を積極的に行い中小企業の経営の安定化に努めました。しかし、依然としてコロナ禍の終息は不透明であり業況回復が遅れている中小企業者からの更なる資金需要に対応するため、国や地公体の施策を積極的に活用し中小企業者の資金繰り支援に取り組んでいきます。
また、経営者保証を不要とする保証は、国も推進しており前年同様に積極的に取り組んでいきます。
② 中小企業の成長・発展のための金融機関との連携体制の拡充
コロナ禍であったため金融機関訪問や定例相談の休止など金融機関との対話は限定的となりましたが、プロパー融資と保証付融資のリスクシェアの均衡は図れています。
金融機関金融支援状況 … 総承諾件数10,095件のうちプロパーあり承諾件数割合
53.3%(全国49.2%)
以上、全国と比較しても保証付き融資への依存度は低く、今後も金融機関等と継続的な対話を行いリスクシェアの認識の共有化を図っていきます。
③ 保証利用の維持・拡大への取組みの強化
金融機関との勉強会や商工団体の金融懇談会へ例年どおりの参加は出来ませんでしたが、協会ホームページ・保証月報を活用した広報活動や、県制度金融説明会などに出席し保証制度の周知に努めました。特にコロナ資金によりコロナ禍で資金繰りの悪化した中小企業者や、これまで利用のなかった優良中小企業者、協会利用を離れた事業者からの保証申込もあり大幅に増加しました。
新規先利用状況 … 2,741企業(前年比+2,256企業)、384億530万円(同+352億9,928万円)
保証利用企業者数 … 10,103企業(前年比+3,810企業)、保証利用度 … 41.1%(同+12.8%)
以上、コロナ資金により既存先や新規先からの保証申込が増大し、保証利用の拡大は図れました。ただ、コロナ対策・対応資金終了後は、新型コロナウイルス感染症の感染状況を把握し、国や地公体の施策を活用しながら保証利用の維持に努めます。
⑵ 経営支援部門
① ライフステージに応じた経営支援先の取組み強化
・ 創業間もない先や経営改善先に対し、計画通りの売上・収益が確保できない状況下において、当面の資金繰り解決策としてコロナ資金等で積極的な金融支援に取り組みました。
・ 回収部門と業況などを共有したうえで、求償権消滅保証候補先を選定し、金融取引の正常化することの重要性について説明しました。
【創業支援対象先】
今期62先のうち、コロナ資金で31件2億4,000万円、他の保証制度で5件2,100万円(前年実績42先のうち1件3,000万円)
【経営支援対象先】
今期298先のうち、コロナ資金で180件47億9,800百万円(前年実績 311先のうち、
14件1億6,800万円)
【再生支援見込み先】
求償権先への提案 6先 保留・静観 4件 審査中 2件
(前年実績 2件1億1,000万円)
コロナ禍の影響により、資金繰り支援策としてコロナ資金で積極的に取り組んだことで、例年にはない金融支援の実績となりました。当面、コロナ禍の先行きが不透明であるので、資金繰り支援を含め経営支援を強化していきます。
求償権消滅保証について求償権先6先へ提案するものの、回答保留が4先で前向きな先は2先にとどまり、現在審査中(計画策定中、他の債権者と交渉中)にて、実績としては次年度に繰り越しとなりました。
② 事業承継に係る取組み強化
・ 事業承継の阻害要因である「経営者保証」を出来る限り非徴求とすることの周知と理解を深めるために、事業承継ネットワーク事務局(現:事業承継・引継ぎ支援センター)と協働して、金融機関に対し事業承継特別保証などの研修会を開催しました。
【金融機関向け研修開催状況】
11月5日~12月16日の間で、4信金(佐賀、唐津、伊万里、大川)及び1信組(佐賀東)に対し開催し、合計148名の参加がありました。
事業承継ネットワーク事務局から経営者保証ガイドライン及びその特則、当協会から事業承継特別保証制度について説明しました。
【事業承継特別保証制度の実績】
申込 3件6,100万円 承諾 2件4,100万円 次年度繰越 1件2,000百万円
【その他/事業承継にかかる専門家派遣事業】
相談2件 派遣実施1件 実施内容:事業承継計画の策定支援(前年実績1件)
下半期からの取組み開始となったが、金融機関向けの研修が信用金庫・信用組合にとどまったことで、事業承継特別保証の実績は低調でありました。
次年度は、期初から事業承継・引継ぎ支援センターとの連携を更に強化することで、地方銀行向けに周知徹底を図ります。
⑶ 期中管理部門
① 初期延滞先及び新規事故報告先への支援策の検討
初期延滞先及び新規事故報告先に対し、金融機関と方針協議(完済見込、約定返済可能、条件変更見込、代位弁済見込、静観)を行い、経営改善など支援策について検討しました。
【初期延滞】
完済見込15先(前年実績27先) 約定返済可能68先(同79先) 条件変更見込20先(同50先)
代位弁済見込20先(同17先) 静観39先(同122先) 合計162先(同295先)
【新規事故報告】
完済見込4先(前年実績3先) 約定返済可能14先(同13先) 条件変更見込10先(同11先)
代位弁済見込34先(同37先) 静観15先(同31先) 合計77先(同112先)
【検討した支援策】
資産処分2先 経営改善5先 生産性向上1先 新規保証42先 合計50先
今期の期中管理先への支援策としては、コロナ禍ということで資金繰り支援が主体となり、経営改善や生産性向上が低調でありました。
② 専門支援機関と連携した支援策の実施
金融機関と支援策を協議した結果、専門支援機関の関与が必要と判断した先は、当協会の専門家派遣事業や経営改善支援センターなどを利用しました。
【当協会の専門家派遣事業】
経営改善計画策定支援 :相談15先 申込9先 実施7先
うち初期延滞又は新規事故報告先1先
生産性向上計画策定支援:相談 3先 申込3先 実施3先
うち初期延滞又は新規事故報告先1先
【専門支援機関】
中小企業再生支援協議会:相談37先 申込37先 計画同意26先
うち初期延滞又は新規事故報告先3先
経営改善支援センター :相談18先 申込18先 計画同意16先
うち初期延滞又は新規事故報告先1先
今期は、コロナ禍により経営改善計画が策定しにくい状況であったことから、中小企業再生支援協議会の「新型コロナ特例リスケジュール」による対応が多かったです。
⑷ 回収部門
① 求償権への基本的な対応
・ 総回収実績 5億5,218万円(計画比78.9%、前年比90.5%)
<内訳> 定期回収 2億5,019万円(計画比89.1%、前年比88.3%)…入金件数21,293件(前年比-2,643件)
不動産回収 5,525万円(計画比54.5%、前年比79.9%)…任意処分3,199万円、競売2,326万円
その他回収 2億4,674万円(計画比77.6%、前年比95.7%)…一括回収1億9,796万円、破産配当他4,878万円
・ 代位弁済初年度回収 1,872万円(前年比80.0%)
以上、計画先で未入金先に対する交渉を促進しましたが、総回収実績は計画未達となりました。今後も関係人等との交渉を継続し、不動産任意処分から競売への移行や一部弁済による保証債務免除等を活用し、回収促進に取り組んでいきます。
② 定期弁済を継続している求償権への対応
・ 損害金減額免除による完済 … 117件(前年比+1件)
回収額1億8,383万円(前年比79.9%)
・ 一部弁済による保証債務免除 … 10件(前年比-5件)
回収額 1,845万円(前年比79.0%)
・ 求償権消滅保証の取組み … 保証承諾0件
以上、前年比を上回ったのは、損害金減額免除による完済の件数のみでした。また、求償権消滅保証による回収はありませんでしたが、令和2年度末時点では相談案件6件のうち2件が進行中です。今後も関係人等の実情に合った回収方法の提案により、早期回収に取り組んでいきます。
③ 回収見込みがない求償権への対応
・ 管理事務停止手続 361件(前年同月比142.1%) 26億8,885万円( 同 160.6%)
・ 求償権整理 398件( 同 101.3%) 40億 147万円( 同 114.2%)
以上、今後も管理の効率化のため、積極的に取り組んでいきます。
⑸ その他間接部門
① 内部管理体制の充実
コンプライアンス・プログラムを着実に実施し、役職員にコンプライアンスに対する意識の浸透に努めました。
・ コンプライアンス統括会議及び委員会…毎月開催
・ コンプライアンスチェックシート…シート内容の一部見直しを行い令和2年9月に実施
・ コンプライアンス・ニュース…令和2年8月、12月に発行
・ 外部研修会…企業幹部人権・同和問題研修会、企業トップクラス人権・同和問題研修会をそれぞれ1名受講
反社会的勢力等(以下「反社等」という。)の排除に向けて、反社等関係者の情報収集やスクリーニング作業を毎月実施しました。また、内部検査、個人データの取扱状況の監査を実施し、内部体制の強化を図りました。
・ 情報収集しての協会登録者…暴力団員等 延べ14名、特記・特筆情報者 延べ11社40
名
・ 内部検査…業務統括部令和2年10月実施、総務部令和2年11月実施
・ 個人データの監査…業務統括部令和2年12月実施、総務部令和3年1月実施
以上、コンプライアンス態勢の充実に向けて、今後も継続して取り組んでいきます。また、反社等の排除に向けて情報収集に努めるとともに、関係機関と連携を図っていきます。
② 人づくり及び健康な職場づくりの取組みの推進
全保連や外部団体主催の研修・セミナー等がほとんど中止となり、当初計画していた研修受講ができませんでした。
新型コロナウイルス感染症防止策としてビニールパーテーション、アクリル板設置による飛沫防止やアルコール除菌スプレー等の設置を行いました。また、年間健康推進計画の着実な実施により、職員の健康維持に努めました。
・ 衛生委員会…令和2年度4回開催
・ 健康管理…定期健康診断、脳ドック、ストレスチェック、VDT健診等を実施
以上、職員の専門的知識の習得及びスキルアップを図るため、集合研修のみならず、WEB研修や通信教育等も活用した取り組みを行います。また、健康な職場づくりに向けて、年間健康推進計画の着実な実施に努めます。
③ 広報活動の充実
協会の活動や取組みを幅広く発信するため、ホームページの活用のほか、関係機関の媒体を利用し、中小企業者に情報が直接届くよう見直しました。
・ 佐賀県地域産業支援センターメールマガジン登録企業数…約1,400先
・ リーフレット、チラシ、ノベルティグッズの作成およびプレスリリース等を随時行いました。
・ 伊万里信金のケーブルテレビ番組に出演し、協会や保証制度の紹介を行いました。
以上、広報については、効果的、効率的に情報を発信する必要があり、SNSの活用など新たな方策に取り組みます。
④ 地方創生等への貢献に努めるための取組みの推進
上期は、各地公体がコロナ感染症拡大防止のため、各種セミナーの開催を自粛していましたが、下期になり地公体主催の創業セミナーへの講師派遣、各金融機関の研修会等で事業承継についての説明を行う等、地域の産業振興に努めました。
・ 創業セミナーに講師派遣…佐賀市(令和2年8・12月)、伊万里市(10月)、有田町(11月)
・ 金融機関の研修会に講師派遣…伊万里信金(11月)、大川信金(11月)、佐東信組(12月)、佐賀信金(12月)、唐津信金(12月)
佐賀大学への出前講座や同大学のゼミ生を協会事務所に招いての職場体験授業は、コロナ感染症拡大防止の為、全て中止となりました。
以上、令和2年度に中止となった取組みについては、安全対策を行ったうえで再開していきます。