5 外部評価委員会の意見
⑴ 業務環境について
佐賀県内の経済動向は、個人消費や生産活動は持ち直しており、雇用情勢も改善し企業倒産も低調に推移する等、全体として緩やかに回復しつつある。また、中小企業向け融資の動向は、県内に本店を有する地方銀行及び第二地方銀行の中小企業等貸出残高がいずれも増加しており、金融機関が返済緩和に対する柔軟な姿勢を継続していること、中小企業向け融資を積極的に行っていることなどから、また倒産件数の推移から見ても県内中小企業の資金繰りは小康状態にあると思われる。先行きについては、雇用環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかに景気回復に向かうことが期待されるが、海外経済の不確実性などには留意する必要がある。
このような環境の中、佐賀県信用保証協会(以下「協会」という。)においては、中小企業者に寄り添い、利便性の高い保証制度の提案など中小企業の資金需要にきめ細かく対応し資金繰りの安定に大きく貢献された。また、創業者支援及び経営・再生支援にも積極的に取り組むなど、企業のライフステージに応じた支援がなされており、協会の担う役割は益々重要性を増している。
⑵ 重点課題の評価について
① 保証部門
ア 中小企業者等に寄り添った保証支援の充実
中小企業者等との面談の機会を増やし利便性の高い保証制度やクイック保証の提案をなされ、保証推進に努められたことにより中小企業者の資金繰り円滑化に大きく貢献されたことは評価できる。
近年、保証料の割高感や金融機関の事業性評価によるプロパー融資へのシフトなど、協会を取り巻く環境は厳しさを増しているが、今後も金融機関や関係機関と連携し、中小企業者のライスステージに応じた多様な資金需要に的確に対応していただきたい。
イ 創業者支援の充実
創業者セミナーの開催や、創業資金を利用された先へのモニタリングを通じ追加保証や返済条件緩和を実施するなどフォローアップにも取り組まれており評価できる。
全国的に中小企業者が減少する中、国も積極的に創業支援に取り組んでおり、平成30年4月から拡充された創業関連保証等の積極的な活用を期待したい。
ウ 経営・再生支援の充実と強化
専門家派遣事業では、従来の経営改善計画に生産性向上計画を加えた策定計画に取り組まれるなど充実を図られている。
再生支援についても、メインバンクと協調して金融支援に取り組まれている。特に、返済緩和先の正常化促進策として、モニタリングを通じての借換一本化や、企業訪問による業態確認のうえ、利便性の高い保証制度を提案するなど中小企業者に寄り添った支援が為されており評価できる。
平成30年4月から、協会の業務に「中小企業に対する経営支援」が追加されるなど、経営・再生支援業務は中小企業の経営改善のため、その重要性が益々高くなっている。今後も国の補助金などを活用し、金融機関や支援機関と連携を図りながら積極的に取り組んでいただきたい。
② 期中管理部門
ア 期中管理の充実
初期延滞先及び事故報告先へ金融機関と連携し早期対応に取り組まれたことにより、延滞債務残高が大幅に減少しており、積極的な取り組み姿勢は評価できる。今後も金融機関との連携を継続して取り組んでいただきたい。
イ 返済緩和先に対する経営・再生支援
金融機関等との連携による企業の経営改善計画策定支援に積極的に取り組まれていることは評価できる。今後も金融機関及び再生支援協議会等と連携した再生支援に積極的に取り組んでいただきたい。
③ 回収部門
ア 有担保求償権の再点検による不動産処分の促進
有担保案件の再点検を行い、求償権の内容を見極めた上で処分交渉を行うなど効率的な回収に繋げており評価できる。今後も不動産処分を促進し、より効率的な回収に繋げていただきたい。
イ 求償権状況に応じた早期回収の促進
損害金減額免除による一括回収や、一部弁済による保証債務免除などに積極的に取り組まれている。また、事業継続先への求償権消滅保証等の提案もなされており、求償権の状況に応じた対応は評価できる。今後も能動的な返済交渉による早期回収並びに回収業務の効率化により一層取り組んでいただきたい。
④ その他間接部門
ア コンプライアンスの徹底
役職員のコンプライアンスに対する意識の徹底に努められている。引き続き、コンプライアンスプログラムの着実な実践に努めていただきたい。
イ 反社会的勢力等の排除に向けた取り組みの強化
反社会的勢力等の排除に向けた取り組みは継続して実施されている。さらに平成29年10月からは、全国暴追センターからも全国信用保証協会連合会を経由して情報提供されるなど取り組みの強化を図られており評価できる。引き続き、反社会的勢力等の情報収集に努め、排除に向けた取り組みを継続していただきたい。
ウ 広報活動の充実
従来からの施策を継続しつつ、新たな情報発信を行うなど積極的に取り組まれているが、まだまだ知名度不足の感は否めない。
更なる協会の知名度アップと保証利用に繋がるような広報活動に取り組んでいただきたい。
エ 人材の育成
従来の信用保証に加え、経営支援など幅広い業務に対応するため、今後も継続して職員の専門的知識の習得や能力開発、スキルアップに取り組んでいただきたい。
⑶ 事業計画・収支計画・財務計画について
事業計画について、保証承諾は計画比86.2%の241億33百万円、保証債務残高は、計画比95.0%の788億48百万円となり、保証承諾、保証債務残高ともに計画達成には至らなかった。
代位弁済は、計画比62.7%の6億89百万円、回収については、計画比88.3%の8億83百万円となった。
代位弁済については、返済緩和申請に対する金融機関の柔軟姿勢の継続及び延滞先に対する協会の経営支援等による早期対応により低水準で推移し、継続した取り組みの結果が数字となって表れたものと思われる。
事業計画未達成の項目について、その要因の分析及び計画達成に向けた取り組み内容の充実・強化を図り、次年度以降の課題解決につなげていただきたい。
収支計画については、保証債務残高の減少に伴う保証料収入の減少など厳しい状況にあるが、責任共有負担金等の増収や経費削減に努め、経常収支は3期振りに黒字を確保することができた。また、経常外収支も代位弁済の大幅減少等を要因に黒字を計上し、最終的な収支差額は1億20百万円(計画比179.1%)の黒字を計上することができた。
財務計画については、収支差額のうち収支差額変動準備金に60百万円、基金準備金に60百万円をそれぞれ繰り入れた結果、基本財産の総額は計画比100.2%の116億95百万円に増加できている。
最終的に基本財産を強化できたことは評価できるが、収入の中心である保証料の減少が続いており収益環境はさらに厳しくなると予想される。
協会が中小企業の保証需要に安定して応え、公共的使命を果たしていくためには、基本財産の充実が不可欠であり、そのためにも、確実に収益が確保できるような取り組みを行っていただきたい。
⑷ 総括
年度経営計画に掲げられている各部門の重点課題への取り組みは積極的に実施されており、評価できるものであるが、数値目標に対する達成意識がやや低いように感じられる。計画未達成となっている項目の問題点を明確にし、その問題点をどのようにして改善するのか具体的にした上で、計画達成に向けた取り組みをしていただきたい。
県内中小企業を取り巻く環境や経済・金融情勢は年々大きく変化しており、協会としての役割もそれに合わせて変化している。その様な背景から、平成30年度より、協会の業務として中小企業者に対する従来の信用保証による金融支援に加え「経営支援業務」が法律で明記されたものと思われる。すでに取り組んでいる経営支援をさらに強化する必要があるとともに、中小企業者のライフステージに応じた様々な支援も強く求められている状況である。金融機関や関係機関等と連携し、総合支援機関として県内中小企業者の経営の安定、地域経済の発展のため、次年度においても更なる経営努力をお願いしたい。